世界はこんな色をしてたのか。

転妻アラサー専業主婦が日々を面白がる。結婚6年目。結婚準備→新婚→夫婦2人暮らし→保育士資格取得→娘出産、とその時々で自分の中でホットな話題を書いています。

【本屋大賞受賞作】瀬尾まいこ著『そして、バトンは渡された』『ファミリーデイズ』読書感想文

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※『そして、バトンは渡された』と『ファミリーデイズ』の内容にガッツリふれた感想文です※

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瀬尾まいこさんが好きだ。

辛い状況や、どうしようもないことを暖かい文章で実直に描く。

人物の気持ちが生き生きしていて、綺麗ごとじゃないことを綺麗ごとに纏めてくれる。

現役の国語の先生”らしい”文章で、物語のピークの、「あぁ、これが言いたいんだろうなぁ」という文章は赤ペンで波線が引かれているかのように見えてくる。

すごく、『問題が作りやすい』文章を書くなぁと思っていた。

気に入って既刊すべて読んでいたが、2014年ごろからしばらく新刊を見なくなった。

少し調べたら2011年には教員を退職していたらしく、私生活が忙しくなったのかなと勝手に納得して、しばらく瀬尾まいこさん作品から遠のいていた。

 

なので、2019年に『そして、バトンは渡された』が本屋大賞ノミネート作品として本屋にラインナップされているのを見た時とても嬉しくなってしまった。

なんだ、私が見逃していただけで作品を書いていたのか・・・とウィキペディアで作品リストを調べてみると、たった2年ほどのブランクが空いただけ。当該作の出版は2018年だった。

また、2017年にエッセイ本も出していたようなので、まずはエッセイ『ファミリーデイズ』から読んでみることにした。

 

 

買う前にパラパラとめくってみると飛び込んできた文字は。

 

婦人科系の病気、退職・・・

 

このあたりでブランクの理由が分かってしまった。あれだけ子供好きの方が婦人科系の病気とは。辛い。

 

保育士資格の受験、予想外の妊娠・・・

 

病気をして子供が産みづらいことが判明してからは「絶対に小さい子に関わりたい」と人生を切り替えて、教員から保育士の転向を考えて取り組んでいたというから驚き。

しかし、なんと病気を乗り越えて妊娠・出産されていた。

 

お宮参り、一カ月検診、プレ幼稚園・・・

 

瀬尾まいこさんの筆力で描かれる育児生活。絶対に面白い。

パラパラっとめくって飛び込んできた文字から、絶対に幸せな気持ちになれるエッセイだと心躍らせてレジに向かった。

 

結論、めちゃくちゃ面白かった。

私も教育関係の仕事を退職し、保育士試験に取り組み、現在赤ちゃん待ち生活なので共感できることがありすぎてスラスラ読めた。

保育士実技試験で子供たちにお話をする試験があるのだが、その練習をしているときの旦那さんとのエピソードなんて最高。

教員時代に保護者に助けてもらったから、自分が保護者になったから張り切って活動する話なんて、おなかを抱えて笑ってしまった。

旦那さん、娘さん、瀬尾さん本人も、周りの人達がみんなキュートすぎるのだ。

病からの復活、みたいな大それたものではなくて、ひたすら笑える本だった。短編集になっているので、面白い育児ブログをサラサラ読んでいるような感覚。さくらももこさんのエッセイに近い。

 

エッセイの終盤にとても引っかかるフレーズがあった。

そう、いつもの瀬尾まいこさん作品特有の「見えない赤ペン波線が見える」フレーズ。

 

それが「明日が二つになる」という表現。

 

子供が生まれて、自分の明日と子供の明日、二つがやってくるようになったのだそうだ。

私はその表現にいたく感動してしまった。そう、そうだ。大切な人と生きていくと、明日が二つくるんだ・・・・。

感動すると同時に、(この表現、よくエッセイで使ったな・・・長編小説で使えるレベルのやつだぞ)と思ってしまった。

 

そう思って手にした本命(?)『そして、バトンは渡された』はまさに「明日が二つくる」をストーリーを通して描いた作品だった。

 

母親が死に、再婚し、離婚し、再婚し、離婚し・・・・とドンドン親同士でまさに「リレー」されて育つ環境と親が変わる優子。

あらすじだけ聞くとめちゃくちゃハードな話だが、皆、優子を愛している。それを優子も分かっている。すごく優しい話だ。

 

それぞれの親の愛を受け取ってきちんと成長していく優子。

特に、環境が変わる中で「なにが大事か分かっているから、失っていいものを失っても、動じない」ようになるのは納得感がありつつも少し切なくなってしまった。やはり、友人間のトラブルや学校内のモヤモヤを描かせたら右に出る人は出ないと思う。とてもリアル。

 

優子を愛している選手権をしたら、全員マジで優劣つかないのだけど、個人的には二人目の母親の梨花さんが愛情深くて不器用で好きなキャラクターだった。我が道を行っているようだけど不器用なりに優子を想っているのが態度からびしびし伝わってくる。そしてその梨花さんが言う。

「優子ちゃんの母親になってから明日が二つになった」

 

読んでて、やっぱり!!と思った(笑)。あのフレーズを長編で使わないわけない。しかし、一番長く描かれる”最後のお父さん”森宮さんでもなく、最後の最後にバトンが渡されるあの人(一応伏せておく・・・)でもなく、梨花さんに言わせるとは。絶妙!うまい!赤線!!ここテストに出るやつです!!

『優子への想いが最も表現されている文章を25字以内で抜き出しなさい』!!

 

『そして、バトンは渡された』は明日がどんどん増えていくお話。

幸せな気持ちに包まれます。本屋大賞受賞も納得。ぜひご一読を!

そして、受賞により瀬尾まいこさんフェアがよく展開されていて、代表的な「卵の緒」とか「幸福な食卓」とかが並べられがちだけど、個人的には圧倒的に、エッセイ集『ファミリーデイズ』を合わせて読むことをオススメします。

 (今気づいたんだけど、アマゾンのあらすじに書いてあるこの文章が最高。”「乳児 太もも 太すぎ」等インターネットで悩みを検索し続けた日々。)